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フューチャーストラテジー


ロシアによるウクライナ戦争が深刻化しており、ビジネスはサプライチェーンのさらなる混乱や、消費者信頼感低下により、さらに市場予測が立てにくい状況になっています。不透明な中でも状況を分析した上で、対処するための予測モデルを考えていく必要があると考えます。


このような喫緊な対応が求められる中、燃料、ガス、コモディティの価格上昇や経済制裁によるグローバルマーケットへ与える影響を考察しています。



経済への影響


サプライチェーンの混乱、運用コストの高騰、不安定な市場から、先の見えない経済状態が何年も続いていますが、この戦争は世界中のGDPにさらなるダメージを与えることになると予測されます。 財界人は、世界の株式市場を注視している一方で、消費者は世界のインフレ率の動向に視線を注いでいる状況です。世界のインフレ率は戦争前以前から上向きでしたが、燃料やガスといったコモディティの価格上昇からインフレ率がさらに上昇することが懸念されています。


ロシアは世界第3位の石油生産国であり、天然ガスの主要輸出国であり、またウクライナの小麦や大麦を中心とする農作物は世界中の食卓に供給されています。 また、ロシアの推定外資準備高は6000億ドルであり、当面は強まる経済制裁に耐えるだけの財政的手段があると見られますが、ルーブルが暴落し、ロシア銀行は利率を2倍に引き上げ、海外送金ができなくなるなど、そのインパクトはロシアの社会全体に及んでいます。



消費行動の変化


燃料費を抑える動き:ガソリン車やディーゼル車の燃費悪化が進み、公共交通機関や自転車の利用といった代替の交通手段が選ばれると予測されます。また、消費者は不必要な外出を減らす努力をする中、デジタルコによるミュニケーションやローカルハブの構築が一層重要になります。同時に、ガソリン代の高騰を避けたい消費者に押され、電気自動車へのシフトもまた長期的には加速すると考えられます。

まとめ買いが増加する: 消費者はお金を節約するためにスーパーに行く頻度を減らし、日用品を一括購入するようになります。食料品に関しては、可能な限りより安価なプライベートレーベルが選ばれるでしょう。

省エネ対策:暖房費の削減にむけて設定温度を下げたり、家電の利用を減らす人が増え、ブランケット、移動型ヒーター、冬着といった防寒対策アイテムへの投資が増えます。

食料品への影響:燃料費の高騰を受け、食品の加工コストや輸送コストの上昇が見込まれます。特用サイズの常備食品や地元産青果が増加し、割高な肉や魚が減少します。


サプライチェーンへの影響


ウクライナ戦争は、ポストコロナのリカバリーを遅らせ、コストの高騰や配送の遅延を引き起こし、世界の物流にさらなる影響を及ぼしています。

物流の反応:ロシアのウクライナ侵攻によりキエフの港が閉鎖し、世界で最も重要な貿易ルートのひとつである黒海につながるアゾフ海で商業船の運行が禁止されました。ロジスティック世界大手のFedExとUPSはウクライナとロシアへの配送を一時停止し、ドイツの物流企業Deutsche Post DHLもウクライナへの出入荷を一時的に中断しました。


世界の小麦供給に与える影響:ウクライナの肥沃な土壌は"ヨーロッパのパンかご"としての役目を果たしてきました。米国農務省によれば、2022年にウクライナ産小麦が世界輸出量に占める割合は12%、トウモロコシでは16%に上るという報告もあげられています。戦争が長引けば、夏に行われる小麦の収穫にもインパクトを与えかねない。ここで産出される小麦はパン、パスタ、加工品の原料であり、ヨーロッパを始め、北米や中東に住む数多くの人々の日常に直結します。


小売への影響


インフレ率の上昇やサプライチェーン問題ですでに対応に追われているリテーラーにさらなるダメージを与え兼ねない状況です。

店舗閉鎖:ロシア内の店舗閉鎖を発表する企業が相次いでいます。IKEAは全店舗を一時閉鎖していますが、ロシアの人々が食料品や医薬品などの生活必需品を確保できるようMEGAショッピングセンターの営業は継続する方向です。Hermèsはロシアでの営業・活動停止を真っ先に発表した高級ブランドのひとつです。Cartier、Net-a-Porter、Van Cleef & Arpelsといった高級ブランドを所有するスイスのコングロマリットRichemontもこれに追随しました。ASOS、H&Mなどのファストファッションリテーラーは、ロシアでの営業を停止し、ウクライナの店舗を一時閉鎖しています。



ラグジュアリーへの影響

ラグジュアリー消費者の動向:ロシア富裕層は高級品を買っていますが、世界の高級品消費に占めるロシアの割合は5%に過ぎず、消費額は年間90億ドルと、中国やアメリカといった大規模なラグジュアリー成長市場に比べ大幅に少ないと指摘されています。

ロシアには数多くの経済制裁が課せられているますが、高級品はその対象ではなく、ロシア市場で販売するかどうかの決断はブランドに委ねられています。Hermèsが確固たる措置を表明する中、Bulgariは2022年に予定通りモスクワに新店舗と新しいブランデッドホテルをオープンするなど足並みが揃わない状況です。


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